帰宅

そして待ちに待った帰宅。2週間前のことだ。が、もっとずっと前のことのように思える。

まず困ったのがトイレ。退院前からほとんど歩けなかったので、車椅子の生活が始まった。廊下が狭い、ドアが外開き、そして何より介助の仕方がわからない。母は白血病であるために、とくにケガには注意が必要だ。介護の経験などまるでない父は難なくやってのけるのを見てびっくりした。これが愛情なのか、どのように介助すれば母が楽なのか、じっくり考えたのだろうな。ズボンとトレパンの前と後ろを一緒に持って、1、2、3で立ち上がる。そして「横歩き、横歩き」と言いながら便器の前まで移動、パンツを下ろす。排便後、ウォシュレット、また同じ方法で車椅子まで戻る。これが狭いトイレだと難しいのでドアを外し、段差を削り、カーテンをつけることにした。カーテンの取り付けのみ費用がかかるとのことだった。

そして食事。母はおかゆは食べやすいらしく、おかゆと梅干し、味噌汁、果物を少しずつ食べていた。あとカロリー補給のためにメイバランスを飲んでいた。父が仕事の合間に惣菜を買って来ていたが、一年近くの入院の後、調味料も材料もなく、料理ができる状態ではなかった。料理が得意で美味しいものが大好きだった母にスーパーの惣菜を食べてもらうのは気がひけた。冷たい雨が降り続けていた。